二つ発見した。
その一つは、賊はいつも二人組で、うち一人は女賊であるということだ。
もう一つは、その事件のあとにはいつも怪画の買い手が来て、価値のない画を割高に買っていくことだった。その買い手は伯爵の場合の外は岩田天門堂ではなかったが、買って行くときの口上などは、三事件ともほとんど共通した文句を使っているところからして、或いは一つの系統に属している商人たちではないかと探偵に不審の心を抱かせ、それから袋探偵の活動が更に一歩深入りした。
そのころ北岡三五郎という新興成金があった。彼はこの連中の中では珍らしく審美派であって、儲けた金の一部をもって、元宮様の別邸をそっくり買い取り、それから日本画や洋画等の美術品の蒐集に凝りだした。
しかし短い時期に、そう大した美術品が集まるわけもなかったが、だがその中にピカ一ともいうべき名画が一枚あった。それはルウベンスの描いた「宝角を持つ三人のニンフ」であった。
これは縦長の画で、題名のとおり三人のニンフが画面に居て、花や果実のあふれ出てくる宝角という円錐形の筒を抱いているのであった。
この名画を、北岡は応接間の壁にかけていた。彼はこの名画を来客
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