ら去らねばならないだろう」
先生はどうされるのであろうか? 私にはまったく見当がつかなかった。先生の歪んだ顔は、やがてスクリーンの上から消えた。はじめは軽いことに考えていたが、そのときには一大異変が起っていたのだ。
「号外放送! ただいま『赤鬼号』は徐々に動きだしました。万歳、万歳。しかしどうしたものか渋谷博士の姿は見えません。しきりに信号を送っておりますが、まったく応答がありません。……」
と、JOAKは全世界中継のラインにこの駭くべき発見を送りこんだ。
そうだ、ロケットは徐々に動いてゆく。しかし懐かしき操縦者の姿はいつまでもスクリーンの前に現われなかった。
「サール博士は語る」と外国電話が入ってきた。「渋谷博士の最大の犠牲がロケットをふたたび推進させた。博士はおそらく機内にいないであろう。彼はロケットより身を捨てたのにちがいない。ロケットから離れ去ることによって、ロケットに働く万有引力はその平衡が破れ、ふたたび動き出したのだ。博士はついに生命を犠牲にしてロケットとテレビジョンとをいかし、世界人類のために貢献しようと決心したのだ。これから先、吾人が見るところの映像は、博士の生命
前へ
次へ
全12ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング