《せん》君の卓越《たくえつ》した科学小説|挿絵《さしえ》と、原稿|催促《さいそく》に千万の苦労を懸けた林誠君の辛抱強さとがなかりせば、到底完成しなかったであろう。本書上梓に当って篤《あつ》くお礼を申上げたい。

 さて、これから僕は、いよいよ腰を据えて科学小説を書くつもりである。ではどんなものを書くか。その答はここには書かないで、小説の形にした上で諸君に答えようと思う。
 科学小説を大いに隆盛《りゅうせい》にしたい。僕一人の力だけでは到底どうなるわけのものではない。有力にして天分有る隠れたる作家が多数現われ、そこに科学小説壇というものを作り、お互いに研究し合い、刺戟し合いしてこそ、始めて意義あり且つ甚大《じんだい》なる発展が期待されるのである。僕はこの拙著《せっちょ》を公《おおやけ》にするに際して、この事を敢えて本格的科学者の一団に向い、声を大きくして叫びたく思う者である。
   世田谷竹陵亭に於て



底本:「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」三一書房
   1991(平成3)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「地球盗難」ラヂオ科学社
   1937(昭和12)年4
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