編集者が、どれだけ正しく科学小説を育て得られるか、その点について予《かね》て大きな疑問を持っている。僕の結論をはっきり先に述べると、今日の編集者は、科学が普及しない時代に教育をうけた人達であり、また科学畑から出た人がほとんど見当らないところからいって、本質的に科学の味がわからないのである。だから科学物を取扱うためには、非常な勉強が入用だ。この勉強が嫌いな編集者だと、ついに科学小説的色盲となる虞《おそ》れがあるようにおもう。
それに反し、科学小説をたいへん悦《よろこ》んでくれ、そして科学小説の味を理解してくれるのは青少年層だ。この人達は、科学が普及した今日の時代において教育され、そして科学隆興の中に刺戟をうけ、科学というものに大きな興味をもっている。だから科学小説がその嗜好《しこう》に投ずるのである。
いかにこの青少年層が科学小説に対し熱意をもっていてくれるか、それは恐らく今日の多くの編集者も知らないし、多くの作家も知らないところであろうが、実に熾烈《しれつ》を極《きわ》めている。この青少年たちが次の時代において大人になり、そして大人の小説を読むようになったとき、果して今日のような非
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