ちろんドン助が新聞記者に喋《しゃべ》ったように、怪物の尻尾《しっぽ》もなんにも見えなかった。
敬二はいまさらながら、この出来事を眼の前に見て、気味がわるかったが、思いついて、首にかけていたカメラでパチリと写真を一枚とった。露出はわずか千分の一秒という非常な短かい撮影だった。
「やあ、これかい。なるほどなるほど」と突然大きな声がしたので、その方をふりむいてみると、誰がいつの間に知らせたのか、蟹寺博士が来ていた。博士は例の強い近眼鏡を光らせて、崩壊してゆく自動車を熱心にじっと見つめていた。
自動車も消えてしまうと、そこらに集って見物していた人達は、にわかに狼狽《ろうばい》をはじめた。さあ、こんどはどこが崩壊するかしれないからです。もし自分の身体が崩壊しはじめたらどうしよう。
カリカリカリカリ。
突然また例の怪音がおこって、人々の耳をうった。
カメラの手柄
敬二少年が、わずか千分の一秒という短かい露出でもって、○○獣の動いていると思われるところをうまく写真にとったことは、前にいった。少年は、どんな写真が撮《と》れたかを一刻も早く見たくてたまらなかった。それで目下《もっ
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