のつよさにおどろいた。
「へへえ、支配人が俺をとっちめるといってたかい。そいつは困ったな。あいつは柔道四段のゴロツキあがりだから、いま見つかりゃ肋骨《ろっこつ》の一本二本は折られると覚悟しなきゃならない。そいつは痛いし――」と腕をこまねいて、
「どうも弱った。仕方がない。夜になるまでここに隠れていよう」ドン助はごろりと音をたてて横になった。すると間もなく平和な鼾が聞えてきた。すっかりアルコールの擒《とりこ》となった彼の身体は、まだまだねむりをとらなければ足りないのであった。


   ○○獣《マルマルじゅう》の再来


 恐ろしいビルディング崩壊が再び始まったのはその日の午後であった。
 あれよあれよと見る間に、例のカリカリカリという怪音をあげて、東京ホテルの裏に立っている大きな自動車のガレージを噛《かじ》りはじめた。
 敬二少年が外に走りでたときは、もはやガレージの横の壁が、まるで達磨《だるま》を横にしたように噛《か》みとられ、そして中にある修理中の自動車がガリガリやられているところだった。じっと見ていると、それらの壁や自動車が、音をたてて自然に消えてゆくとしか見えないのであった。も
前へ 次へ
全48ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング