の中にあったのを訂正]などとそんなことを真剣に考えて読んだものだが――どんな本を読んでみても自分の頭がわるいせいか結局、なんにも[#「なんにも」に傍点]わからないということだけしきゃわからなかった。
 しかし、僕のような人間にとっては、自分の人生に対する態度がハッキリ定まらない間はなに一ツやる気にはなれないのである。そして結局、自分の心の根本的態度が動揺しているのだから、なに一つ出来よう筈がない。なんとか早くきまりをつけたいものだとそればかりを気にして暮らしてきたのである。
 つまり、僕はスチルネルを読んで初めて、自分の態度がきまったのだ。ポーズが出来たわけだ。そこで初めて眼が覚めたような気持になったのだ。今迄どうにもならないことに余計な頭を悩ましてきたことの愚かなことに気がついたわけだ。自分の読んだ書物の中で恐らくこの位自分を動かした本は一つもない。それから、度々繰返しては読んでみた。実際、初め読み出した時は一寸見当がつかないで弱ったが、英訳の序文にもこの本は難解だと断ってあるのだから、少し位の我慢はしなければならないと思って、辛抱して読んでいるうちに、次第にスチルネルのいうことがわ
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