闘の間に抑圧せられながらも、底流として存在する別個の精神にロマンティシズムがある。更に最近に於て著しく台頭して来たソシアリズムの精神は遠く明治初年に於ける仏蘭西学派にその最初の酵母を有するが如くに思われるけれど、少くとも日本現代に於けるそれは基督教のイディアリズムを母とし、ナチュラリズムを父とする一種不可思議な奇形児である。彼こそはまことに“Romantic Spirit”の“Antipode antipodes”である。
 僕は自分のことだけを話すつもりで、思わず横道に逸れたが、しかし僕の心がそれ等の諸精神の影響を受け、それ等の諸精神が又僕という一個の存在の中で色々と Dramatic Scene を演じたことも事実である。
 とに角僕は時代精神の潮流に押し流されながら、色々の本を乱読した――文学の書物も勿論好きではあったが、哲学めいた本の方に興味があった――しかし、その頃は今から見ると所謂単純だったから、「こんどこそあの本を読んで、ほんとうに『真理』というようなものを、ハッキリ把みたい、『宇宙の謎』というようなものを少しでもいいから解決してみたい」?[#「?」は底本では、カギカッコ
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