藁草履《わらぞうり》
島崎藤村
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)藁草履《わらぞうり》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)大字|金《かね》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)掻※[#「※」は「てへん+劣」、77−9]《かきむし》り
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長野県北佐久郡岩村田町大字|金《かね》の手《て》の角にある石が旅人に教えて言うには、これより南、甲州街道。
この道について南へさして行くと、八つが岳《たけ》山脈の麓《ふもと》へかけて南佐久の谷が眼前《めのまえ》に披《ひら》けております。千曲川《ちくまがわ》はこの谷を流れる大河で、沿岸に住む人民の風俗方言も川下とは多少違うかと思われます。岸を溯《さかのぼ》るにつれまして、さすがの大河も谿流《けいりゅう》の勢に変るのですが、河心が右岸の方へ酷《ひど》く傾《かし》いでおりますので、左岸は盛上がったような砂底の顕《あらわ》れた中に、川上から押流された大石が埋《うずま》って、ところどころに白楊《どろ》、蘆《あし》、などの叢《やぶ》が茂
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