うして夫婦ともナカ/\の洒落者だとか、小母さん達は窓側で互の眼前《めのまへ》を通る藝人の噂をしました。町々の子供等ばかりでなく、大人まで爭つて呼びとめては買つたものでした。それパン屋が來たと言へば、窓の外の狹い往來は人だかりがして、何となく私の幼い心をそゝりました。
豐田さんの家である年の節句か何かの折に草餅を造つたことをも、私はこゝに書きつけて置きたいと思ひます。何故といふに、田舍に居る身内のものから遠く離れた私には、左樣いふ草餅の香氣《にほひ》などを嗅ぐほど可懷《なつか》しい思をさせるものが有りませんでしたから。尤も、草餅と言つても、蓬《もちぐさ》のたりない都では田舍で食べるほど青いシコ/\としたのは出來ません。これでもつと草が多く入つて居て、餅の合せ目から田舍風のアンコが這出したら、そんなことを思ひました。
臺所に近い奧の部屋ではお婆さんや小母さんが下婢《をんな》を相手にしてその草餅を造《こしら》へる、私は出來たのを重箱に入れて貰つて近所へ配りに行きました。見ると、お婆さん達は捏《こ》ねた餅を手頃にちぎつては、それを掌で薄べたく圓く延ばして居りますから、
『お婆さん、僕の田舍
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