どには、よくまた小父さんに連れられて行つたものです。乞食の集つて居るやうな薄暗いところから急に明るい群集《ひとごみ》の中へ出ることは、妙に私の心を唆《そゝ》りました。小父さんは夜見世をひやかすのが好きで、私を連れては種々な物のごちや/\並んだ露店の前を眺め/\歩きました。
 斯の手紙を書きかけて居るうちに、私は今一寸こゝで、姉の家や鷲津さんの家を振返つて見たいやうな心が起りました。といふはあの二軒の家に有るもので、豐田さんの家には無いものがあります。私の生れた家にも無いものです。私が姉の家に居る頃、あそこの祖母《おばあ》さんが時々なぐさみに琴を鳴らしたことを貴女に御話しましたらう。小さな甥までが謠曲《うたひ》の一ふしぐらゐは諳記《そらん》じて居ることを御話しましたらう。鷲津さんの家が矢張それで、しめやかな小唄でも口吟《くちずさ》んで見るやうな聲が老人《としより》の部屋から時々|泄《も》れて聞えました。左樣いふ音樂の空氣といふものは豐田さんの家の方へ移つてからは、バツタリ無くなりました。
 何故私が斯樣なことを御話するかといふに、あの甥の一生を考へ、豐田さんの家に殘つた人達のことを思ひ、
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