校を退《ひ》いて了《しまひ》ました。銀さんは學問よりも商業で身を立てるやうにと姉夫婦から説き勸められて、日本橋のある紙問屋へ奉公に行くことに成りました。國から二番目の兄に養父が上京した節、銀さんも御店《おたな》の方から暇を貰つて逢ひに來たことが有りました。その時は皆な揃つて記念の寫眞を撮りました。その中で銀さん一人は商人らしい前垂掛で撮れて居ます。
 姉が年寄から子供まで連れて夫と一緒に歸國する前には、種々なことが有りました。ある日、私は姉に言ひ附けられて、今迄行つたことの無い家へ使に出掛けたことを覺えて居ます。姉は祖母さんに内證で、箪笥の中から自分の着物を取出して風呂敷包にして私に背負はせました。私の行つた先は店頭《みせさき》に暗い暖簾《のれん》の掛つた家です。番頭が居まして、私が背負つて行つた着物を一枚々々ひろげて見て、通ひ帳の中へ御金を入れて私に渡しました。私は子供心にもいくらか斯の意味を悟りました。姉のところへ引返してから、斯ういふ使はもう御免だと言つて、姉を笑はせたことが有りました。さういふ中でも、姉は祖母さんの膳にだけ新しいオサシミをつけました。祖母さんの好きな物は何よりオ
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