るい光線の射し込む部屋で、母や嫂が針仕事をひろげたところでした。障子を明けると、細長い坪庭を隔てゝ石垣の下に叔母の家の板屋根などが見え、ずつと向ふの方には遠い山々、展けた谷、見霞むやうな廣々とした平野までも望みました。丁度私の田舍は高い山の端《はづれ》で、一段づゝ石垣を築いて、その上に村落を造つたやうな位置にあります。私の家はその中央《なかほど》にありました。叔母の家といふはお霜|婆《ばあ》といふ女に貸してありましたが、心易く私の家へ出入した人でした。そこから通つて來るには是非とも坂道の往來を上らなければなりませんでした。
 お霜婆はてか[#「てか」に傍点]/\した禿を薄い髮の毛で隱して居るやうな女でした。若い女中を一人使つて、女ばかりで暮して居ました。どうして斯樣な人が叔母の家を借りて居たのか、皆目《かいもく》私には解りませんでしたが、兎《と》に角《かく》村の旦那衆がよく集るところではありました。お霜婆は私を可愛がつて呉れましたから、私も遊びに行き/\しまして、半ば自分の家のやうに心易く思つた位でした。旅の飴屋が唐人笛などを吹いて通ると、必《きつ》とそれを呼んで、棒の先にシヤブるやう
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