りました。茶摘といへば日頃出入の家の婆さんまで頼まれて來て、若葉をホイロに掛けて揉む時には男も一緒に手傳ひました。玄關前の庭の横手には古い椿の樹がありましたが、その實から油をも絞りました。私は母や嫂の織つた着物を着、太助の造つた草履を穿いて、少年の時を送つたのです。
例のお牧に連れられて、映し繪を見に行つた晩のことでした。旅の見世物師が來て、安達《あだち》が原《はら》だの、鍋島の猫騷動などを映して見せ、それでいくらかの木戸錢を取りました。障子に映つた鬼婆、振揚げた出刃庖丁、後ろ手にくくし上げられた娘、それから老女に化けた怪しい猫の幻影《まぼろし》などは、夢のやうな恐怖を誘ひました。家へ戻つて行つても、私は安心しませんでした。
『祖母樣《ばゝさま》、お前さまは眞實《ほんたう》の祖母樣かなし……一寸|背後《うしろ》を向いて見さつせれ……』
『これ、何を馬鹿言ふぞや。』
母や嫂は側に居て笑ひました。その頃から私は『人浚《ひとさら》ひ』に浚はれて行くといふ恐怖なども感じて、祖母と二人ぎり寂しい隱居所の方へ行く時には、寢床の中に小さくなつて寢たことも有りました。お化より何より、『人浚ひ』が私
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