北村透谷の短き一生
島崎藤村

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)已《すで》に

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|終《しま》い

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正二年四月)
−−

 北村透谷君の事に就ては、これまでに折がある毎に少しずつ自分の意見を発表してあるから、私の見た北村君というものの大体の輪廓は、已《すで》に世に紹介した積りである。北村君の生涯の中の晩年の面影だとか、北村君の開こうとした途《みち》だとか、そういう風のものに就ては私は已にいくらか発表してある。明治年代も終りを告げて、回顧の情が人々の心の中に浮んで来た時に、どういう人の仕事を挙げるかという問に対しては、いつでも私は北村君を忘れられない人の一人に挙げて置いた。北村君の一番|終《しま》いの仕事は、民友社から頼まれて書いたエマルソンの評伝であった。それは十二文豪の一篇として書いたものだが、すっかり書き終らなかったもので、丁度病中に細君が私の処へその原稿を持って来て、これを纏《まと》めて呉れないかという話があって、そ
次へ
全19ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング