ちまじっているさまも可憐《かれん》であった。一刻も早く遺骸は他《よそ》へ移したい、こんな忌まわしい座敷牢《ざしきろう》の中には置きたくない、とは一同のものの願いであったが、さて母屋《もや》の方へ移すべきか、隠宅の静の屋の方へ移すべきかの話になると、各自意見もまちまちで相談は容易にまとまらなかった。母屋をえらびたいのは山々だが、現在医師の開業しているところを明け渡させるのはたとい二、三日でも故人の本意ではなかろうと言うものがある。そうかと言って、あの静の屋のような狭い小楼からお師匠さまの葬式が出せるかと言うものがある。この事は、拙斎自身の申し出で母屋と一決した。馬籠の庄屋と本陣問屋とを兼ねた最後の人を見送る意味からも、古い歴史のある記念の家をこころよく使用してもらいたいとは、拙斎が申し出であった。
 雨は降ったりやんだりしているような日であったが、すこし小降りになった時を見て、半蔵の遺骸《いがい》には蓑《みの》をかけ、やがて木小屋から運び出されることになった。多感な光景がそこにひらけた。生前古い青山の家にはもはや用のないような人間だとよく言い言いしたその半蔵も変わり果てた姿となって、もう
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