半蔵は自分ながらもおかしく言い当てたというふうで、やがておのれを笑おうとするのか、それとも世をあざけろうとするのか、ほとんどその区別もつけられないような声で笑い出した。笑った。笑った。彼は娘の見ている前で、さんざん腹をかかえて笑った。驚くべきことには、その笑いがいつのまにか深い悲しみに変わって行った。
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きりぎりす啼《な》くや霜夜のさむしろにころも片敷き独《ひと》りかも寝む
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 この古歌を口ずさむ時の彼が青ざめた頬《ほお》からは留め度のない涙が流れて来た。彼は暗い座敷牢の格子に取りすがりながら、さめざめと泣いた。お粂はただただその周囲をめぐりにめぐって、そこを立ち去るに忍びなかったのである。

       四

 十一月にはいって、美濃落合《みのおちあい》の勝重《かつしげ》は旧《ふる》い師匠を見舞うため西から十曲峠《じっきょくとうげ》を登って来た。駅路時代のなごりともいうべき石を敷きつめた坂道を踏んで、美濃と信濃《しなの》の国境《くにざかい》にあたる木曾路《きそじ》の西の入り口に出た。路傍の両側に立つ一里|塚《づか》の榎《えのき》も、それ
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