った鏡に見入っていた。そして、言葉をついで、
「そう言えば、この二、三日はおれも弱ったぞ。恐ろしいやつに襲われるような気がして、夜もろくろく休めなかった。」
「お師匠さま、お前さまはよく敵が来るなんて言わっせるが、そんなものがどこにおらすか。」と庄助は言う。
「そりゃ、お前たちに見えなくても、おれの目には見える。あいつはいろいろな仮面《めん》をかぶって来るやつだ。化けて来るやつだ。どうして、油断もすきもあったもんじゃないぞ。恐ろしい、恐ろしい――庄助さ、大きな声じゃ言えないが、この古い家の縁の下にだってあの化け物は隠れているよ。」
 そう言って、半蔵はなおも鏡の面を根気にふきながら、相手の庄助に身をすくめて見せた。
 その時まで庄助は栄吉らから頼まれて来たことをそこへ切り出そうとして、しかもそれを言い得ないでいた。庄助は正直一徹で聞こえた男で、こんな場合に一策を案じるというふうの人ではなかったから、うまいことを言って半蔵を連れ出すつもりはもとよりなかったが、しかし裏の木小屋の方に彼を待ち受けるものが座敷牢とは言いじょう、一面にはそれは病室に相違ないから、その病室での養生《ようじょう》を
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