半蔵の気に入りで、万福寺境内からも彼を連れ戻《もど》って来たように、この場合とても彼を言いなだめることができようということで。
いかな旧|組頭《くみがしら》の庄助もこの役回りには当惑した。庄助が店座敷の方へ行って見ると、ちょうど半蔵はひとりいる時で、円形《まるがた》の鏡なぞを取り出し、それに息を吹きかけ、しきりに鏡の面をふいているところであった。それはずっと以前に彼の手に入れた古鏡で、裏面には雲形の彫刻などがしてあり、携帯用の紐《ひも》の付いたものである。この旧《ふる》い屋敷の母屋《もや》を医師小島拙斎に貸し渡すようになってからも、上段の間だけは神殿として手をつけずにあって、その床柱の上に掛けてあったものである。長いこと磨師《とぎし》の手にもかけないで、うっちゃらかしてあったのもその鏡である。
「庄助さ、お互いに年を取ると顔の形も変わるものさね。なんだかこの節は自分の顔が自分じゃないような気がする。」
半蔵はあまり周囲のものが自分を病人扱いにするので、古い鏡なぞを取り出して見る気になったというふうに、それを庄助に言って見せた。彼はよくも映らない自分の姿を見ようとして、しきりにその曇
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