なら言って聞かせるが、おれはこれから行って寺を焼き捨てる。あんな寺なぞは無用の物だ。」
 との半蔵の答えだ。これには庄助も勝之助も、半蔵が戯れているとしか思えなかった。九月も下旬になったころのことで、ちょうど馬籠は秋の祭りの前日にあたる。荒町にある村社|諏訪《すわ》分社の禰宜《ねぎ》松下千里はもとより、この祭りを盛んにすることにかけては神坂《みさか》村小学校の訓導小倉啓助が大いに力瘤《ちからこぶ》を入れている。というのは、この訓導はもともと禰宜の出身だからであった。子供にはそろいの半被《はっぴ》を着せよ、囃子《はやし》仲間は町を練り歩け、村芝居《むらしばい》結構、随分おもしろくやれやれと言い出したのも啓助だ。こんな熱心家がある上に、一年に一度の祭りの日を迎えようとする氏子《うじこ》連中の意気込みと来たら、その楽しさは祭礼当日よりも、むしろそれを待ち受ける日にあるかのよう。笛だ三味線《しゃみせん》だと町内の若者は囃子のけいこに夢中になっている時で、騒がしくにぎやかな太鼓の音が寺道までも聞こえて来ている。
 庄助や勝之助はこんな祭りのしたくを世話するからだではあったが、しかし半蔵の言葉が気
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