責めねばならない。彼は妻の前に手をついて、あやまって彼女を傷つけたことのわびを言い、自分で自分の性質を羞《は》じなければならないようなことも起こって来た。
父子別居の話が追い追いと具体化して来ると、一層隠居のわびしさが半蔵の身にしみた。親戚旧知一同の協議の上、彼の方から宗太あてに差し出すべき誓約書とは、次のような文面のものである。それもまた栄吉や清助の立案によるものである。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
誓約書
一、今回大借につき家政改革、永遠維持の方法を設くるについては、左の件々を確守すべき事。
一、家法改革につき隠宅に居住いたすべき事。
一、衣食住のほか、毎月金一円ずつ小使金として相渡さるべき事。
一、隠宅居住の上は、本家家務上につき万事決して助言等申すまじき事。その許《もと》の存念より出《い》づる儀につき、かれこれ異議なきはもちろんの事。
一、隠宅居住の上は、他より金銭借り入れ本家に迷惑相かけ候《そうろう》ようの儀、決していたすまじき事。
一、家のために親戚の諫《いさ》めを用い我意を主張すべからざる事。
一、飲酒五勺に限る事。
[#ここで字下げ終わり]
前へ
次へ
全489ページ中372ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング