はあの塩の握飯の熱いやつを朴葉《ほおば》に包んで、よく子供にくれましたからね。」
 寄ると触るとお民はそのうわさだ。
「まだお前はそんなことを言ってるのかい。」
 口にこそ半蔵はそう答えたが、その実、この妻を笑えなかった。手離してやった子供はどこにでもいた。夕方にでもなると街道から遠く望まれる恵那山の裾野《すその》の方によく火が燃えて、それが狐火《きつねび》だと村のものは言ったものだが、そんな街道に蝙蝠《こうもり》なぞの飛び回る空の下にも子供がいた。家の裏の木小屋の前から稲荷《いなり》の祠《ほこら》のある方へ通うところには古い池があって、石垣《いしがき》の間には雪の下が毎年のように可憐《かれん》な花をつけるところだが、そんなおとなでもちょっと背の立たないほど深いよどんだ水をたたえた池のほとりにも子供がいた。そればかりではない、子供は彼の部屋《へや》の座蒲団《ざぶとん》の上にもいたし、彼の懐《ふところ》の中にもいた。彼の袂《たもと》の中にもいた。
「この野郎、この野郎。」
 と彼が言いかけて、いくら教えても本のきらいな森夫の耳のあたりへ、握りこぶしの一つもくらわせようとすると、いつのまに
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