か本をかかえて逃げ出すような子供は彼の目の前にいた。
「オイ、蝋燭《ろうそく》、蝋燭。」
と彼が注意でもしてやらなければ、たまに夜おそくまで紙をひろげ、燭台《しょくだい》を和助に持たせ、その灯《ほ》かげに和歌の一つも大きく書いて見ようとすると、蝋燭もろともそこへころげかかるほど眠がっているような子供は彼のすぐそばにもいた。
山のものとも海のものともまだわからないような兄弟の子供の前途にも半蔵は多くの望みをかけた。彼は読み書きの好きな和助のために座右の銘ともなるべき格言を選び、心をこめた数|葉《よう》の短冊《たんざく》を書き、それを紙に包んで初旅の餞《はなむけ》ともした。
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やよ和助読み書き数へいそしみて心静かに物学びせよ
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飛騨にいるころから半蔵はすでにこんな歌を作って子を思うこころを寄せていた。
宗太は弟たちの旅の話を持って無事に東京から帰って来た。一行四人のものが、みさやま峠にかかった時は、さすが山歩きに慣れた子供の足も進みかねたと見え、峠で日が暮れかかったこともあったという。余儀なく彼は和助の帯に手ぬぐいを結びつけ、それで
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