まに差し上げるんだよ。」
幼い和助なぞは半分夢のように母の言葉を聞いて、その心は国旗や提灯《ちょうちん》を掲げつらねた旧い宿場のにぎやかさや、神坂《みさか》村小学校生徒一同でお出迎えする村はずれの方へ行っていた。
やがて青山の家のものは母屋《もや》の全部を御用掛りに明け渡すべき時が来た。往時、諸大名が通行のおりには、本陣ではそれらの人たちのために屋敷を用意し、部屋部屋を貸し与え、供の衆何十人前の膳部の用意をも忘れてはならないばかりでなく、家のものが直接に客人をもてなすことに多くの心づかいをしたもので、それでも供の衆には苦情は多く、弊害百出のありさまであったが、今度は人民に迷惑をかけまいとの御趣意から、ただ部屋部屋をお貸し申すだけで事は足りた。御膳水、御膳米の用意にも、それぞれ御用取扱人があった。半蔵は羽織袴で、準備のできた古い屋根の下をあちこちと見て回った。上段の間は、と見ると、そこは御便殿《ごびんでん》に当てるところで、純白な紙で四方を張り改め、床の間には相州三浦の山上家から贈られた光琳《こうりん》筆の記念の軸がかかった。御次ぎの奥の間は侍従室、仲の間は大臣参議の室というふうで、
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