お民と自分とのそばに寝かした。
この半蔵はすでに妻に話したように、子弟の教育に余生を送ろうと決心した人で、それにはまず自分の子供から始めようとしていた。彼が普通の父親以上に森夫や和助の教育に熱心であるのは、いささか飛騨の山の方で感じて来たこともあるからであった。ひどく肩でも凝る晩に、彼は森夫や和助を部屋へ呼びよせてたたかせることを楽しみにするが、それもただはたたかせない。歴代の年号なぞを諳誦《あんしょう》させながらたたかせた。
「その調子、その調子。」
と彼が言うと、二人《ふたり》の子供はかわるがわる父親のうしろに回って、その肩に取りつきながら、
「貞享《じょうきょう》、元禄《げんろく》、宝永《ほうえい》、正徳《しょうとく》……」
お経でもあげるように、子供らはそれをやった。
こうした休息の日を送りながらも、半蔵はその後の木曾地方の人民が山に離れた生活に注意することを忘れなかった。もはや山林にもたよれなくなった人民の中には木曾谷に見切りをつけ、旧《ふる》い宿場をあきらめ、追い追いと離村するものがある。長く住み慣れた墳墓の地も捨て、都会をめがけて運命の開拓をこころざす木曾人もなか
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