の坂になった往還を夢のように踏んだ。
 伏見屋へはその日の通知を受けた人たちが、美濃の落合からも中津川からも集まりつつあった。板敷きになった酒店の方から酒の香気《かおり》の通って来る広い囲炉裏ばたのところで、しばらく半蔵は遺族の人たちと共に時を送った。喪《も》にいるお富は半蔵の顔を見るにつけても亡き夫のことを思い出すというふうで、襦袢《じゅばん》の袖口《そでぐち》なぞでしきりに涙をふいていたが、どうして酒も強いと聞くこの人が包み切れないほどの残りの色香を喪服に包んでいる風情《ふぜい》もなかなかにあわれであった。その時、半蔵は二代目伊之助のところへ嫁《とつ》いで来ているお須賀《すが》という若いおよめさんにもあった。伊之助は四人の子をのこしたが、それらの忘れ形見がいずれも父親似である中にも、ことに二代目が色白で面長《おもなが》な俤《おもかげ》をよく伝えていて、起居動作にまであの寛厚な長者の風のあった人をしのばせる。故人が生前に、自分の子供を枕《まくら》もとに呼び集め、次郎は目を煩《わずら》っているからいたし方もないが、三郎とお末とは半蔵を師と頼み、何かと教えを受けて勉強せよ、これからの時世
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