からほとばしり出るように流れて来た。この涙は人を打ち砕く涙である。どうかすると、彼は六三郎親子のものの住居《すまい》の隣にあった仮寓に隠れ、そこの部屋《へや》の畳の上に額を押しつけ、平田門人としての誇りをも打ち砕かれたようになって、いくら泣いても足りないほどの涙をそそいだこともあった。
まだ半蔵は半分旅にあるような気もしていたが、ふと、恵那山の方で鳴る風の音を聞きつけてわれに帰った。十月下旬のことで、恵那山へはすでに雪が来、里にも霜が来ていた。母屋《もや》の西側の廊下の方へ行って望むと、ふるさとの山はまた彼の目にある。過ぐる四年あまり、彼が飛騨の方でながめ暮らして来た位山《くらいやま》は、あの田中|大秀《おおひで》がほめてもほめてもほめ足りないような調子で書いた物の中にも形容してあるように、大きやかではあってもはなはだしく高くなく、嶺《みね》のさまは穏やかでけわしくなく、木立ちもしげり栄えてはあるが、しかも物すごくなかった。実に威あって猛《たけ》からずと言うべき山の容儀《かたち》であるとした飛騨の翁の形容も決してほめ過ぎではなかった。あの位山を見た目で恵那山を見ると、ここにはまた
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