び、山家らしい炬燵《こたつ》に夫のからだをあたためさせながら、木曾福島の植松家からあった娘お粂の縁談を語り出すのはお民だ。そこへ手のついた古風な煙草盆《たばこぼん》をさげて来て、ふるさとにあるものがこのままの留守居を続けることはいかにも心もとないと言い出すのはおまんだ。宗太もまだ十八歳の若者ではあるが、村では評判の親孝行者であり、半蔵の従兄《いとこ》に当たる栄吉にその後見をさせ、旧本陣時代からの番頭格清助にも手伝わせたら、青山の家がやれないことはあるまい、半蔵の水無神社宮司として赴任するのを機会にこの際よろしく家督を跡目相続の宗太に譲り、それから自分の思うところをなせ――そう言うおまんは髪こそ白さを加えたが、そこへ手をついて頭を上げ得ないでいる半蔵を前に置いて、この英断に出た。たとい城を枕《まくら》に討死《うちじ》にするような日が来ても旧本陣の格はくずしたくないと言いたげな継母の口から、日ごろの経済のうとさを一々指摘された時は、まったく半蔵も返す言葉がなかった。
今度の帰国の日は、半蔵が自分の生涯《しょうがい》の中でもおそらく忘れることのできなかろうと思った日である。彼が四十四歳で隠
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