る。
「でも、青山さん。お酒ぐらい飲まなくて、やりきれるものですかね。」
お隅はお隅らしいことを言った。
松の内のことで、このかみさんも改まった顔つきではいるが、さすがに気のゆるみを見せながら、平素めったに半蔵にはしない自分の女友だちのうわさなぞをも語り聞かせる。お寅《とら》と言って清元《きよもと》お葉《よう》の高弟にあたり、たぐいまれな美音の持ち主で、柳橋《やなぎばし》辺の芸者衆に歌沢《うたざわ》を教えているという。放縦ではあるが、おもしろい女で、かみさんとは正反対な性格でいながら、しかも一番仲よしだともいう。その人の芸人|肌《はだ》と来たら、米櫃《こめびつ》に米がなくなっても、やわらか物は着通し、かりん胴の大切な三味線《しゃみせん》を質に入れて置いて、貸本屋の持って来る草双紙《くさぞうし》を読みながら畳の上に寝ころんでいるという底の抜け方とか。お隅は女の書く手紙というものをその女友だちのうわさに結びつけて、お寅もやはり手紙はむつかしいものと思い込んでいた女の一人であると半蔵に話した。何も、型のように、「一筆しめしあげ参らせ候《そろ》」から書きはじめなくとも、談話《はなし》をする
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