るというものであった。お隅は凜《りん》とした犯しがたいようなところのある人で、うっかりすると一切女房任せな多吉の方がかえって女房であり、むしろお隅はこの家の亭主である。
「お国から、お便《たよ》りがございましたか。」
「ええ、皆無事で暮らしてるようです。こちらへも御厄介《ごやっかい》になったろうッて、吾家《うち》のものからよろしくと言って来ました。」
「さぞ、奥さんも御心配なすって――」
「お隅さん、あなたの前ですが、国からの便りと言うといつでも娘が代筆です。あれも手はよく書きますからね。わたしの家内はまた、自分で手紙を書いたことがありませんよ。」
 こんな話も旅らしい。お隅の調子がいかにもさっぱりとしているので、半蔵は男とでも対《むか》い合ったように、継母から来た手紙のことをそこへ言い出して、彼の酒をとがめてよこしたと言って見せる。彼が賢い継母を憚《はばか》って来たことは幼年時代からで、「お母《っか》さんほどこわいものはない」と思う心を人にも話したことがあるほどだが、成人して家督を継ぎ、旧宿場や街道の世話をするようになってからは、その継母にすら隠れて飲むことはやめられなかったと白状す
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