、その後はめっきり元気を回復し、例の疵口《きずぐち》も日に増し目立たないほどに癒《い》え、最近に木曾福島の植松家から懇望のある新しい縁談に耳を傾けるほどになったとある。継母の手紙は半蔵の酒癖のことにまで言い及んであって、近ごろは彼もことのほか大酒をするようになったと聞き伝えるが、朝夕継母の身として案じてやるとある。その手紙のつづきには、男の大厄《たいやく》と言わるる前後の年ごろに達した時は、とりわけその勘弁がなくては危《あぶ》ないとは、あの吉左衛門が生前の話にもよく出た。大事の吉左衛門を立てるなら、酒を飲むたびに亡《な》き父親のことを思い出して、かたくかたくつつしめとも言ってよこしてある。


「青山さん、まだ裁判所からはなんとも申してまいりませんか。」
 新しい正月もよそに、謹慎中の日を送っている半蔵のところへ、お隅《すみ》は下座敷から茶を入れて来て勧めた。到来物の茶ではあるがと言って、多吉の好きな物を客にも分けに階下《した》から持って来るところなぞ、このかみさんも届いたものだ。
 旅の空で、半蔵もこんな情けのある人を知った。彼の境涯《きょうがい》としては、とりわけ人の心の奥も知らる
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