の紅《あか》い珠《たま》のように枝に残った郷里の家の庭を想像し、木小屋の裏につづく竹藪《たけやぶ》を想像し、その想像を毎年の雪に隠れひそむ恵那山《えなさん》連峰の谿谷《けいこく》にまで持って行って見た。
とうとう、半蔵は東京で年を越した。一年に一度の餅《もち》つき、やれ福茶だ、小梅だ、ちょろげだと、除夜からして町家は町家らしく、明けては屠蘇《とそ》を祝え、雑煮《ぞうに》を祝え、かち栗《ぐり》、ごまめ、数の子を祝えと言う多吉夫婦と共に、明治八年の新しい正月を迎えた。
暮れのうちに出したらしい郷里の家のものからの便《たよ》りがこの半蔵のもとに届いた。それは継母おまんと、娘お粂《くめ》とからで。娘の方の手紙は父の身を案じ暮らしていることから、留守宅一同の変わりのないこと、母お民から末の弟和助まで毎日のように父の帰国を待ちわびていることなぞが、まだ若々しい女文字で認《したた》めてある。継母から来た便りはそう生《なま》やさしいものでもない。それには半蔵の引き起こした今度の事件がいつのまにか国もとへも聞こえて来て、種々《さまざま》なうわさを生んでいるとある。その中にはお粂のようすも伝えてあって
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