とも、浅々と白く降り積もった上へ、夜の雨でも来ると、それが一晩のうちに溶けて行く。木曾路《きそじ》あたりとは比較にもならないこの都会の雪空は、遠く山の方へと半蔵の心を誘う。彼も飛騨行きのおくれるのを案じている矢先で、それが延びれば延びるほど、あの険阻《けんそ》で聞こえた山間の高山路が深い降雪のために埋《うず》められるのを恐れた。
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独居《ひとりい》のねぶり覚ますと松が枝《え》にあまりて落つる雪の音かな
さよしぐれ今は外山《とやま》やこえつらむ軒端《のきば》に残る音もまばらに
山里は日にけに雪のつもるかな踏みわけて訪《と》ふ人もこなくに
しら雪のうづみ残せる煙こそ遠山里のしるしなりけれ
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これらの冬の歌は、半蔵が郷里の方に残して来た旧作である。彼は左衛門町の二階にいてこれらの旧作を思い出し、もはや雪道かと思われる木曾の方の旧《ふる》い街道を想像し、そこを往来する旅人を想像し、革《かわ》のむなび、麻の蝿《はえ》はらい、紋のついた腹掛けから、鬣《たてがみ》、尻尾《しっぽ》まで雪にぬれて行く荷馬の姿を想像した。彼はまた、わずかに栂《つが》の実なぞ
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