に与えた宗門権の破棄と神葬復礼との方向に突き進むものがあって、過去数百年にわたる武家と僧侶との二つの大きな勢力を覆《くつがえ》すことに力を尽くしたというのも、みなその単純な、しかし偽りも飾りもない心から出たことであった。ことに神仏分離の運動を起こして、この国の根本と枝葉との関係を明らかにしたのは、国学者の力によることが多いのであり、宗教|廓清《かくせい》の一新時代はそこから開けて来た。暗い寺院に肉食妻帯の厳禁を廃し、多くの僧尼の生活から人間を解き放ったというのも、虚偽を捨てて自然《おのずから》に帰れとの教えから出たことである。すくなくもこの国学者の運動はまことの仏教徒を刺激し、その覚醒《かくせい》と奮起とを促すようになった。いかんせん、多勢寄ってたかってすることは勢いを生む。しまいには、地方官の中にすら廃仏の急先鋒《きゅうせんぽう》となったものがあり、従来の社人、復飾の僧侶から、一般の人民まで、それこそ猫《ねこ》も杓子《しゃくし》もというふうにこの勢いを押し進めてしまった。廃寺は毀《こぼ》たれ、垣《かき》は破られ、墳墓は移され、残った礎《いしずえ》や欠けた塊《つちくれ》が人をしてさなが
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