ら古戦場を過ぐるの思いを抱《いだ》かしめた時は、やがて国学者諸先輩の真意も見失われて行った時であった。言って見れば、国学全盛の時代を招いたのは廃仏運動のためであった。しかも、廃仏が国学の全部と考えられるようになって、かえって国学は衰えた。
 いかに平田門人としての半蔵なぞがやきもきしても、この頽勢《たいせい》をどうすることもできない。大きな自然《おのずから》の懐《ふところ》の中にあるもので、盛りがあって衰えのないものはないように、一代の学問もまたこの例にはもれないのか。その考えが彼を悲しませた。彼には心にかかるかずかずのことがあって、このまま都を立ち去るには忍びなかった。


 まだ半蔵の飛騨行きは確定したわけではない。彼は東京にある知人の誰彼《たれかれ》が意見をもそれとなく聞いて見るために町を出歩いた。何も飛騨の山まで行かなくとも他に働く道はあろうと言って彼を引き止めようとしてくれる人もない。今はそんな時ではないぞと言ってくれるような人はなおさらない。久しく訪《たず》ねない鉄胤老先生の隠栖《いんせい》へも、御無沙汰《ごぶさた》のおわびをかねてその相談に訪ねて行って見ると、師には引き止
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