すまい》ともしているので、必ずしもひとりをのみ楽しもうとばかりしている人ではない。でも、冷たく無関心になったこの世の人の心をどうかして揺り起こしたいと考えるような平田門人なぞの気分とはあまりにも掛け離れていた。
「どれ、位牌堂《いはいどう》の方へ御案内しましょう。おそかれ早かれ、こういう日の来ることはわたしも思っておりました。神葬祭のことは、あれは和宮《かずのみや》さまが御通行のころからの問題ですからな。」
という和尚は珠数《じゅず》を手にしながら、先に立って、廊下づたいに本堂の裏手へと半蔵らを導いた。霊膳《れいぜん》、茶、香花《こうげ》、それに燭台《しょくだい》のそなえにも和尚の注意の行き届いた薄暗い部屋《へや》がそこにあった。
青山家代々の位牌は皆そこに集まっている。恵那山《えなさん》のふもとに馬籠の村を開拓したり、万福寺を建立したりしたという青山の先祖は、その生涯にふさわしい万福寺殿昌屋常久禅定門《まんぷくじでんしょうおくじょうきゅうぜんじょうもん》の戒名で、位牌堂の中央に高く光っているのも目につく。黒くうるしを塗った大小の古い位牌には、丸に三つ引きの定紋を配したのがあり、あ
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