せることはできないものか。自分はもう、こんなみじめな内乱を傍観してはいられない。」
 オランダ公務代理総領事としてのブロックが関東の形勢の案じられると言うにも、相応の理由はあった。この人に言わせると、当時のこの国の急務は内乱をおさめるにある。日本国がいつまでも日本人の手にありたいと願うなら、早くこんな内乱をおさめるがいい。そして国内衰弊の風を諸外国に示さないがいい。これまで強大な諸大名が外国から購《あがな》い入れた軍船、運送船、鉄砲、弾薬の類はおびただしい額に上り、その代金は全部直ちに支払われるはずもなく、現に諸外国の政府もしくは臣民はその債権者の位置にある。もし国内の戦争が日につぎやむ時なく、ここに終わってかしこに始まるというふうに、強大な諸大名が互いに争闘を事としたら、国勢は窮蹙《きゅうしゅく》し、四民は困弊するばかりであろう。これがブロックの懸念《けねん》であった。
「どうしてもこれは英国公使に協議する必要がある。」とまたロセスの声で、「もちろんわれわれは日本の内政に干渉する意志はない。しかしなんらかの形で、南軍の参謀に反省を求める必要がある。あの慶喜をも救わねばならない。一国の
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