を失おうとする地方《じかた》の人民のために争えるだけ争おうとしているような夫半蔵の方へ帰って行った。
諸方の城郭も、今は無用の長物として崩《くず》されるまっ最中だ。上松《あげまつ》宿の原畑役所なぞが取り払われたのは、早くも明治元年のことである。それは尾州藩で建てた上松の陣屋とも、または木曾御材木役所とも呼び来たったところである。お民が人のうわさによく聞いた木曾福島の関所の建物、彼女の夫がよく足を運んだ山村氏の代官屋敷――すべてないものだ。二百何十年来この木曾地方を支配するようにそびえ立っていたあの三|棟《むね》の高い鱗茸《こけらぶ》きの代官屋敷から、広間、書院、錠口《じょうぐち》より奥向き、三階の楼、同心園という表居間《おもていま》、その他、木曾川に臨む大小三、四十の武家屋敷はことごとく跡形もなく取り払われた。
どれほどの深さに達するとも知れないような、この大きな破壊のあとには何が来るか。世にはいろいろと言う人がある。徳川十五代将軍が大政奉還を聞いた時に、よりよい古代の復帰を信じて疑わなかったような平田門人としても、彼女の夫たちはなんらかの形でこれに答えねばならなかった。
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