なうれしいことはないと言ってやったほどだ。半蔵はまた半蔵で、「うちの祖母《おばあ》さんの言うことも聞かないようなものは、自分の娘じゃない」と言っているくらいの人だから、かつておまんに逆らおうとしたためしもない。その祖母に対しても、お粂はこの縁談を拒み得なかった。伊那からはすでに二度も仲人《なこうど》が見えて、この二月には結婚の日取りまでも申し合わせた。先方としては、五、六、七、八の四か月を除けば、それ以外の何月に定めてもいいとある。そこで、こちらは娘のために来たる九月を選んだ。そのころにでもなれば、半蔵のからだもいくらかひまになろうと見越したからで。意外にも、お粂は悲しみに沈んでいるようで、母としてのお民にはそれが感じられるというのであった。
「なにしろ、うちじゃあのとおり夢中でしょう。木曾山のことを考え出すと、夜もろくろく眠られないようですよ。わたしはそばで見ていて、気の毒にもなってさ。まずまず縁談もまとまったものだから、こまかいことはお前たちによろしく頼むとばかり。お粂のことでそうそう心配もさせられないじゃありませんか。」とお民は言って見せる。
「いったい、この話がまとまったのは去
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