の休暇を見つけて山遊びに出かけた留守のおりであったが、年老いてまだ元気なおばあさんは孫のよめに当たるお里を相手に、妻籠旧本陣の表庭にいて手造りの染め糸を乾《ほ》すところであった。男の下着の黄八丈《きはちじょう》にでも織るものと見えて、おばあさんたちが風通しのいいところへ乾している糸の好ましい金茶であるのもお民の目についた。古くから山地の農民の間に実用されて来たように、おばあさんはその黄色な染料を山の小梨《こなし》に取ることから、木槌《きづち》で皮を砕き、日に乾し、煎《せん》じて糸を染めるまで、そういうことをよく知っていた。縫うこと、織ること、染めること、すべてこのおばあさんに仕込まれて、それをまた娘のお粂に伝えているお民としては、たまの里帰りが彼女自身の娘の昔を思い出させないものはない。
 やがて天井の高い、広い囲炉裏ばたでは、おばあさんはじめお里やお民が黒光りのする大黒柱の近くに集まって、一しきり子供の話で持ちきった。お里と寿平次の間には長いこと子供がなく、そのために正己を馬籠から迎えて養っていたほどであるが、結婚後何年ぶりかでめずらしい女の子が生まれた。琴柱《ことじ》がその子の名だ
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