うな昔者には、今の世の中のことがわからなくなって来た。」と吉左衛門は言った。「金兵衛さんの言い草がいい。とても自分には見ちゃいられないと言うんさ。あの隠居としたら、そうだろうテ。」
「そう言えば、お父さんは夢をごらんなすったというじゃありませんか。」と半蔵は父の顔をみまもる。
「その夢さ。」
「言って見れば、どんな夢です。」
「まあ梁《はり》が落ちて来たんだね。あんまり不思議な夢だから、易者にでも占ってもらおうかと思ったさ。何か家の内がごたごたしてる。さもなければ、あんな夢を見るはずがない。おれはそう思って、気になってしかたがなかった。」
「実は、お父さん、わたしはありのままをお話しした方がいいと思っていたんです。お母《っか》さんやお民が心配するものですからね――お父さんのからだにでもさわるといけないなんて、しきりにわたしを止めるものですからね――つい今までお父さんには隠してありました。」
おまんは部屋を出たりはいったりしていた。彼女は半蔵父子の話の方に気を取られていたというふうで、次ぎの部屋から茶道具なぞをそこへ運んで来た。きのうの粽《ちまき》は半蔵にも食わせたかったが、それも残っ
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