太刀《すけだち》は、一層その不平の声を深めた。
「これは宿場の盛衰にもかかわることだ。伏見屋の旦那あたりが先に立って、もっと骨を折ってくだすってもいい。」
旧御伝馬役の中には、こんなことを言い出したものもある。
民意の開発に重きを置いた尾州藩中の具眼者がまず京都駅逓司の方針に賛成したことは不思議でもない。このことが尾州領内の木曾地方に向かって働きかけるようになって行ったというのも、これまた不思議でもない。京都駅逓司の新方針によると、たとい諸藩の印鑑で保証する送り荷たりとも、これまでのように問屋場を素通りすることは許されない。公用藩用の名にかこつけて貫目を盗むことも許されない。袖《そで》の下もきかない。荷物という荷物の貫目は公私共に各問屋場で公平に改められることになった。
東京と京都との間をつなぐ木曾街道の中央にあって、多年宿場に衣食した馬籠の御伝馬役の人たちはこの改革に神経をとがらせずにはいられなかったのである。彼らの多くは、継ぎ立てたい荷物は継ぎ立てるが、そうでないものは助郷村民へ押しつけるような従来の弊習に慣れている。諸大名諸公役の大げさな御通行のあったごとに、すくなくも
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