なく客の話に耳を澄ましたり世間の様子をうかがったりした。時には、次男が近所の子供を相手に隠れんぼをはじめ、押入れに隠れようとして、家にはいないはずの父をそこに見つける。まっ黒な顔。延びた髪と髯《ひげ》。光った目。その父が押入れの中ににらんで立っているのを見ると、次男はすぐに戸をぴしゃんとしめて他のところへ行って隠れた。子供心にもそれを口外しては悪いと考えたのであろう。時にはまた、用を達《た》すための彼が天井裏から床下に降りて行って、下男に見つけられることもある。驚くまいことか、下男はまっ黒な貉《むじな》のようなやつが縁の下にいると言って、それを告げに夫人のところへ走って行く。まさかそれが旦那《だんな》だとは夫人も言いかねて、貉か犬でもあろうから捧で突ッついて見よなぞと言い付けると、早速《さっそく》下男が竹竿《たけざお》を取り出して来て突こうとするから、たまらない。幸いその床下には大きな炉が切ってあって、彼はそのかげに隠れたこともある。五年の月日を彼はそんな暗いところに送った。いよいよ王政復古となったころは、彼は長い天井裏からはい出し、大手を振って自由に濶歩《かっぽ》しうる身となった。の
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