四

 東北戦争――多年の討幕運動の大詰《おおづめ》ともいうべき戊辰《ぼしん》の遠征――その源にさかのぼるなら、開国の是非をめぐって起こって来た安政大獄あたりから遠く流れて来ている全国的の大争いが、この戦争に運命を決したばかりでなく、おそらく新しい時代の舞台はまさにこの戦争から一転するだろうとさえ見えて来た。
 当時、この日の来るのを待ち受けていた人たちのことについては、実にいろいろな話がある。阿島の旗本の家来で国事に心を寄せ、王室の衰えを慨《なげ》くあまりに脱籍して浪人となり、元治《げんじ》年代の長州志士らと共に京坂の間を活動した人がある。たまたま元治|甲子《きのえね》の戦さが起こった。この人は漁夫に変装して日々|桂川《かつらがわ》に釣《つ》りを垂《た》れ、幕府方や会津桑名の動静を探っては天龍寺にある長州軍の屯営《とんえい》に通知する役を勤めた。その戦さが長州方の敗退に終わった時、巣内式部《すのうちしきぶ》ら数十人の勤王家と共に幕吏のために捕えられて、京都六角の獄に投ぜられた。後に、この人は許されたが、王政復古を聞くと同時によろこびのあまりにか、精神に異状を来たしてしまったという
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