「何にしろ、戦《いくさ》に勝って来た勢いで、鼻息が荒いや。あれは先月の二十八日でした。妻籠へは鍬野《くわの》様からお知らせがあって、あすお着きになるおおぜいの御家中方へは、宿々でもごちそうする趣だから、妻籠でもその用意をするがいいなんて、そんなことを言って来ましたっけ。こちらはおおぜいの御通行だけでも難渋するところへもって来て、ごちそうの用意さ。大まごつきにも何にも。あのお知らせは馬籠へもありましたろう。」
「ありました。」と伊之助はそれを承《う》けて、「なんでも最初のお知らせのあった時は、お取り持ちのしかたが足りないとでも言われるのかぐらいに思っていました。奥筋の方でもあの御家中方には追い追い難儀をしたとありましたが、その意味がはっきりしませんでした。そこへ、また二度目の知らせがある。今度は飛脚で、しかも夜中にたたき起こされる。あの時ばかりは、わたしもびっくりしましたよ。上《かみ》四か宿の内で、宿役人が一人《ひとり》に女中が一人手打ちにされて、首を二つ受け取ったと言うんでしょう。」
「その話さ。三留野《みどの》あたりの旅籠屋《はたごや》じゃ、残らず震えながらお宿をしたとか聞きましたっ
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