勇ましく活気に満ちた人たちが肩にして来た銃は、舶来の新式で、当時の武器としては光ったものである。そのいでたちも実際の経験から来た身軽なものばかり。官軍の印《しるし》として袖《そで》に着けた錦の小帛《こぎれ》。肩から横に掛けた青や赤の粗《あら》い毛布《けっと》。それに筒袖《つつそで》。だんぶくろ。
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第四章
一
四日にわたって東山道軍は馬籠峠《まごめとうげ》の上を通り過ぎて行った。過ぐる文久元年の和宮様《かずのみやさま》御降嫁以来、道幅はすべて二|間《けん》見通しということに改められ、街道に添う家の位置によっては二尺通りも石垣《いしがき》を引き込めたところもあるが、今度のような御通行があって見ると、まだそれでも充分だとは言えなかった。馬籠の宿場ではあと片づけに混雑していた時だ。そこここには人馬のために踏み崩《くず》された石垣を繕うものがある。焼け残りの松明《たいまつ》を始末するものがある。道路にのこしすてられた草鞋《わらじ》、馬の藁沓《わらぐつ》、それから馬糞《まぐそ》の類《たぐい》なぞをかき集めるものがある。
「大きい御通行のあとには、きっと大
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