は枯れ松葉を運ぶものがある。玄関の左右には陣中のような二張りの幕も張り回された。
半蔵はそこへ顔を出した清助をも見て、
「清助さん、総督は八十歳以上の高齢者をお召しになるという話だが、この庭へ砂でも盛って、みんなをすわらせることにするか。」
「そうなさるがいい。」
「今から清助さんに頼んで置くが、わたしも中津川まで岩倉様のお迎えに行くつもりだ。その時は留守を願いますぜ。」
そんな話も出た。
日は次第に高くなった。使いの者が美濃境の新茶屋の方から走って来て、先鋒《せんぽう》の到着はもはや間もないことであろうという。駅長としての半蔵は、問屋九郎兵衛、年寄役伏見屋伊之助、同役|桝田屋《ますだや》小左衛門、同じく梅屋五助などの宿役人を従え、先鋒の一行を馬籠の西の宿はずれまで出迎えた。石屋の坂から町田の辺へかけて、道の両側には人の黒山を築いた。
宮さま、宮さま、お馬の前に
ひらひらするのはなんじゃいな。
とことんやれ、とんやれな。
ありや、朝敵、征伐せよとの
錦《にしき》の御旗《みはた》じゃ、知らなんか。
とことんやれ、とんやれな。
島津轡《しまづぐつわ》の旗
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