ろいろと聞いて来て、青山一家にまで襲って来たこんな強い嵐《あらし》が早く通り過ぎてくれればいいという顔つきでいる。
「きょうはくたぶれたぞ。」と吉左衛門が言い出した。「まあ、おれもめずらしく気分のいい日が続くし、古稀《こき》の祝いのお礼にもまだ行かなかったし、そう思って、旧《ふる》い友だちの顔を見に行って来たよ。おれもへぼくなった。上の伏見屋まで坂を登るぐらいに、息が切れる。それにあの金兵衛さんがおれをつかまえて放さないと来てる。いろいろの宿場のうわさも出たよ――いや、大長咄《おおながばなし》さ。」
 老年らしい沈着《おちつき》をもった父の様子に、半蔵もやや心を安んじて、この宿場の改革が避けがたいというのも一朝一夕に起こって来たものではないことや、もはや木曾谷中から寄せた人足が何百人とか伊那の助郷から出た人足が千人にも及ぶとかいうようなそんな大通行の許される時代でないことや、したがって従来二十五人二十五匹のお定めの宿伝馬もその必要なく、今に十三人十三匹の人馬を各宿場に用意すればそれでも交通輸送に事を欠くまいというのが、福島総管所の方針であるらしいことなぞを父に告げた。
「まあ、おれのような昔者には、今の世の中のことがわからなくなって来た。」と吉左衛門は言った。「金兵衛さんの言い草がいい。とても自分には見ちゃいられないと言うんさ。あの隠居としたら、そうだろうテ。」
「そう言えば、お父さんは夢をごらんなすったというじゃありませんか。」と半蔵は父の顔をみまもる。
「その夢さ。」
「言って見れば、どんな夢です。」
「まあ梁《はり》が落ちて来たんだね。あんまり不思議な夢だから、易者にでも占ってもらおうかと思ったさ。何か家の内がごたごたしてる。さもなければ、あんな夢を見るはずがない。おれはそう思って、気になってしかたがなかった。」
「実は、お父さん、わたしはありのままをお話しした方がいいと思っていたんです。お母《っか》さんやお民が心配するものですからね――お父さんのからだにでもさわるといけないなんて、しきりにわたしを止めるものですからね――つい今までお父さんには隠してありました。」
 おまんは部屋を出たりはいったりしていた。彼女は半蔵父子の話の方に気を取られていたというふうで、次ぎの部屋から茶道具なぞをそこへ運んで来た。きのうの粽《ちまき》は半蔵にも食わせたかったが、それも残っ
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