けじゅく》の名主《なぬし》文太夫《ぶんだゆう》の家へも寄って来た。あの地方では取締役なるものができ、村民は七名ずつ交替で御影《みかげ》の陣屋を護《まも》り、強賊や乱暴者の横行を防ぐために各自自衛の道を講ずるというほどの騒ぎだ。その陣屋には新たに百二十間あまりの柵矢来《さくやらい》が造りつけられ、非常時の合図として村々には半鐘、太鼓、板木が用意され、それに鉄砲、竹鎗《たけやり》、袖《そで》がらみ、六尺棒、松明《たいまつ》なぞを備え置くという。村内のものでも長脇差《ながわきざし》を帯びるか、または無宿者《むしゅくもの》を隠し泊めるかするものがあればきびしく取り締まるようになって、毎月五日には各村民が陣屋に参集するという。この申し合わせに加わる村々は、北佐久《きたさく》、南佐久の方面で七十四か村にも及んでいる。いかに生活難に追い詰められた無宿浮浪の群れが浪人のまねをしたり大刀を帯びたりしてあの辺の街道を押し歩いているかがわかる。追分《おいわけ》、軽井沢《かるいざわ》あたりは長脇差の本場に近いところから、ことに騒がしい。それにしても、村民各自に自警団を組織するほどのぎょうぎょうしいことはまだ木
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