兼ねて、福島の方へ立って行きましたよ。」
半蔵の挨拶《あいさつ》だ。百姓総代ともいうべき組頭《くみがしら》庄助と、年寄役伊之助とは、こういう時に半蔵が力と頼む人たちだったのだ。
やがてこの宿場では福島からの役人とその下役衆の出張を見た。野尻《のじり》、三留野《みどの》の宿役人までが付き添いで、関東御通行中の人馬備えにということであった。なにしろおびただしい混《こ》み合いで、伊那の助郷もそうそうは応援に出て来ない。継立《つぎた》ての行き届かないことは馬籠ばかりではなかった。美濃の大井宿、中津川宿とても同様で、やむなく福島から出張して来た役人には一時の止宿を願うよりほかに半蔵としてはよい方法も見当たらなかったくらいだ。ところが、この峠の上の小駅は家ごとに御用宿で、役人を休息させる場処もなかった。その一夜の泊まりは金兵衛の隠宅で引き受けた。
「お師匠さま。」
と言って勝重《かつしげ》が半蔵のところへ飛んで来たのは、将軍家用の長持を送ってから六日もの荷造りの困難が続いたあとだった。福島の役人衆もずっと逗留《とうりゅう》していて、在郷の村々へ手分けをしては催促に出かけたが、伊那の人足は容易
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